4×20+10+9=?

フランス語を習う時に驚くことの一つに数の数え方があります。英語では20以降90までの十の倍数にはそれぞれ「twenty」、「thirty」、…「ninety」と固有の単語があり、それに一の位の数をくっつければ100までの数が表せるわけですがフランス語では事はそう簡単に運びません。

「dix(ディズ=10)」「vingt(ヴァン=20)」「trente(トラント=30)」…「soixante(スワサント=60)」まで来れば、当然次の70は「sept(セット=7)」から推量して「septante(セタント)」となるのかと思いきや、突然「soixante-dix(スワサント・ディズ=70)」、すなわち「60+10」。

では次の80は「soixante-vingt(スワサント・ヴァン=60+20=80)」に違いないと信じていると、何と今度は掛け算が導入され、「quatre-vingt(キャトル・ヴァン=4×20=80)」。

う〜む、では90は「trois-trente(トロワ・トラント=3×30=90)」とでも言うのかしら、などと予想するとこれまたハズレ。「quatre-vingt-dix(キャトル・ヴァン・ディズ=4×20+10=90)」と言うのだから恐れ入ります。99などと言おうものなら「quatre-vingt-dix-neuf(キャトル・ヴァン・ディズ・ナフ)」、「4×20+10+9」なんてことになるわけです。

こんな計算日常会話でしていたら(毎回計算してるわけではないと思いますが…)数学に滅法強くなるか、頭が混乱して計算が苦手になるかのどちらなんだろう、と考えてしまいますが、有名な数学者が多くフランスから出ている事実は前者を示唆しているのかもしれません


おまけ ― 婦人画報社の雑誌名には対象年齢層を表すフランス語に由来するものがいくつかあります。「vingtaine(ヴァンテーヌ)」は「約20」、「vingt-cinq ans(ヴァン・サン・カン)」は「25才」、「trent ans(トラン・タン)」は「30才」ですので、御自分にあった雑誌をお選び下さい(すみません、余計なお世話でした^^;)。日本食研の焼き肉のたれ「晩餐館」はひょっとして「ヴァン・サン・カン」をもじったものなのだろうか、というのは考えすぎ?


さらに複雑な数体系を持つ言語に関しては高杉さんの『世界の言語の数体系』をご参照ください。アイヌ語で99は「(10-1)+(5×20-10)」、アランブラック語に至っては「20×(2+2)+5×(2+1)+(2+2)」なんだそうです(*_*)。