風に吹かれて…

英語には「-ant」、「-ent」で終わる単語が多くありますが、これらのほとんどはラテン語系の現在分詞の語尾に由来します。例えば「student(ストゥーデント=学生)」の語源はラテン語「studeo(ストゥデオ=努力する)」の現在分詞「studens(ストゥデンス)」です。このような例は数え切れないくらいありますが、そのうちのいくつかをご紹介しましょう。

トップバッターは「restaurant(レストラン)」。綴りからも分かるようにもともとはフランス語で、「restaurer〔仏〕(レストレ=回復する)」の現在分詞です。英語の「restore(リストア)」にあたる単語で、食事をすれば元気が回復するというわけです。18世紀にパリに初めてオープンしたレストランの看板に書かれていたラテン語の一文「ego vos restaurabo(=I'll restore you=あなたを回復させます)」に由来します。

「croissant(クロワッサン)」もやはりフランス語の動詞「croître(クロワトル=増加する)」の現在分詞。英語の「increase(インクリース=増加する、inは強調)」にあたる単語です。もともとは「増加している」→「満ちつつある(月)」→「三日月」の意味でした。クロワッサンの起源は16〜17世紀にかけて領土の拡大を目指して東欧に進出したオスマントルコをウィーンの守備軍が破った際に、イスラム圏、特にトルコのシンボルである三日月をかたどったパンを焼いて食べたのが始まりだとか。これをルイ16世に嫁いだマリー・アントワネットがフランスに伝え、今ではパリっ子の朝食に欠かせない存在となっています。ついでに、楽譜の強弱記号「crescendo〔伊〕(クレッシェンド=だんだん強く)」も「croître」と同源の単語「crescere〔伊〕(クレシェーレ=増大する)」のジェルンディオ(イタリア語の現在分詞のようなもの)です。因みに引違戸によく使われる半円状の鍵のことを英語で「crescent lock(クレセント・ロック)」と呼びます。

「pendant(ペンダント)」もフランス語「pendre(パンドル=ぶら下がる)」の現在分詞から。この「pendre」の仲間には「suspend(サスペンド=宙ぶらりん→一時停止する)」、「independence(インディペンデンス=(他人に)ぶら下がらない→独立)」、「appendix(アペンディックス=付録、盲腸)」などがあります。男性の股間からぶら下がっている「penis(ペ○ス)」も同じ語源だと何かの本で読んだことがありますが、この話はちょっと眉唾です。