中日タイガース

ちょっと遅くなりましたが季節柄と言うことで「えと」のお話。「えと」はよく漢字で「干支」と書かれますがこれは当て字で「十十二」の略。十干とは「陰陽五行説」に基づくいわゆる「甲乙丙丁…」のことです。

五行 十干 音読み 訓読み
こう きのえ
おつ きのと
へい ひのえ
てい ひのと
つちのえ
つちのと
こう かのえ
しん かのと
じん みずのえ
みずのと

訓読みの行を見るとわかるように、五行「木火土金水」を「陽」と「陰」すなわち「兄(え)」と「弟(と)」に分けたのが十干で、「えと」という名称はこの「兄弟(えと)」に由来します。だから本当は「今年の干支(えと)はうさぎ」ではなく、「今年の干支(かんし)は己卯(きぼう)」あるいは「今年のえとは己(つちのと)」と言うのが正しい、ということになるでしょうか。因みに五行の間には、木から火を(木は燃える)、火から土を(物が燃えると土になる)、土から金を(地面を掘ると金が出る)、金から水を(金属の表面に水滴が付く)、水から木を(木が生えるには水が必要)、それぞれ生ずるとする「相生(そうしょう)」と、木は土に、土は水に、水は火に、火は金に、金は木に、それぞれ剋つとする「相剋(そうこく)」という面白い関係があります。一方の十二支ですが、こちらは諸説あって由来がはっきりしません。植物の成長状態を表すとも言われます。

十干十二支どちらも「循環」を表すため、時間や方位を表すのによく用いられました。「戊辰戦争」「辛亥革命」などの歴史上の出来事、縁起が悪いとされる年「ひのえうま」、1924(大正13)年完成の「甲子園」、10と12の最小公倍数60歳を祝う「還暦」、4月の旧称「月」、うなぎを食べる「用の」、草木も眠る「三つ時」、「前」「後」「正」(あまり使われませんが午前0時を指す「正」という語もあり)、昼過ぎに開花するとされる「(ひつじぐさ)」、北と南を結ぶ「子午線」、地名・人名の「巽(たつみ=辰巳」「乾(いぬい=戌亥」、船の舵の取り方「面舵(おもかじ←の舵)」「取り舵(とりかじ←の舵)」なども干支に由来します。鬼が牛のような角を持ち、虎皮のパンツをはいているのは丑寅の方角が鬼門だからです。

芥川之介は辰年・辰の日・辰の刻に生まれました。中日ドラゴンズの球団名は当時のオーナーが年生まれだったことに由来します。中日新聞社の社長であった彼の名前は「杉山之助」。どうせなら「とらゴンズ」にでもすれば良かったのに…(おやぢギャグですまぬ ^^;)


おまけ ― 英語の「tigers」は「タイガー」と発音されますが、プロ野球チーム「阪神タイガー」、往年のグループサウンズ「ザ・タイガー」はどちらも濁らない「ス」が正式名称。他にも「z」が「s」の発音に変わってしまった例としては「news(ニュー」→「ニュー」、「blues(ブルー」→「ブルー」などがあります。でも一方では「loose(ルー」→「ルー」や「closeup(クローアップ)」→「クローアップ」と逆向きの交替もあったりするフシギな日本語…