足算(あしざん)

ラテン語、ギリシャ語で「足」のことをそれぞれ「pes」、「pous」といいます。英語では「p」が「f」に変化して「foot」となりました。この「pes」、「pous」の連結形がそれぞれ「ped」、「pod」で、「pedal(ペダル)」、「pedicure(ペディキュア)」、「pedestrian(ペデストリアン=歩行者)」などの派生語があります。「ペディグリー・チャム」というドッグフードがありますが、「pedigree(ぺディグリー=血統)」の語源は「鶴の足」。家系図の形が鳥の足のように分岐していることに由来します。

この「ped」と「pod」、数字を表す接頭語をつけていくとこれがなかなか面白いのです。まずは「mono(モノ=ひとつの)」をつけた「monopod(モノポッド)」。写真を撮る際、三脚を置く余裕は無いけれどもある程度手ぶれを防ぎたい場合に使う道具「一脚」を表します。また、西洋の中世伝説の「一本足人」を意味する場合もあります。日本で言うところの「唐傘おばけ」みたいなやつでしょうか?足が2本の「bipod(バイポッド)」は自動小銃などを載せる「二脚」、「tripod(トライポッド)」はお馴染みの「三脚」です。

「tetrapod(テトラポッド)」は「足4本」、日本では株式会社テトラの商標で、堤防に設置する消波用コンクリートの商品名です。四つ足にはラテン語系の「quadruped(クワドルペッド)」という単語もあり、「tetrapod」と共に「四足獣」を指す場合もあります。

では6つ足「hexapod(ヘクサポッド)」は何の意味でしょう?答えは「昆虫」。おなじみの「octopus(オクトパス=蛸)」は「八本の足」の意味です。「decapod(デカポッド=十本の足)」といえばエビ・カニなどの「十脚類」やイカなどの「十腕類」を指します。

これで終わりかと思えばさにあらず。日本語でも「百足」と書く「ムカデ」は英語で「centipede(センティピード=百本の足)」、さらに上をいくのが「millipede(ミリピード=千本の足)」、「ヤスデ」の意味になります。


おまけ ― 「pod」の派生語として面白いものをもう一つ。地球上での対蹠点を意味する「antipode(アンティポード)」という単語があります。接頭語「anti-」は「アンチ巨人」のように日本語としても使われていますが「反対の」の意味。すなわち原義は「足が反対向きの」。ヨーロッパから見て地球の裏側に住むオーストラリア人のことを茶化した「antipodean(アンティポディアン)」の表現もあります。