お下がりのジョージ

# 一応映画のタイトルと引っ掛けたつもり(^^ゞ。

いよいよブッシュ政権が始動しました。第43代大統領となる彼のフルネームは「George Walker Bush」。41代大統領だったお父さんの名前は「George Herbert Walker Bush」ですから紛らわしいですね。アメリカの新聞では父親と区別するために「George W.」と書いたりしていますが、全然区別になっていないような…。息子に自分と同じ名前をつけるのは西洋では珍しくなく、時に「Jr.(ジュニア)」、「U(ザ・セカンド=二世)」などのサフィックスがついた人名も見かけますね。でも一番困るのはお母さんでしょう。夫と息子をどう呼び分けているのでしょうか。

さて、この「George」という名はアメリカで人気の高い名前ですが、これはやはり初代大統領「George Washington(ジョージ・ワシントン)」の名によるところが大きいようです。そのワシントン自身の名は彼が生まれた当時の英国王「George U(=ジョージ2世)」にあやかって付けられました。アメリカ南東部に位置する「Georgia(ジョージア)」州は、この地を植民地とすることを許可した同イギリス国王に因みます。また、コカ・コーラ社の缶コーヒーブランド「Georgia(ジョージア)」は、同社の本拠地が州都アトランタにあることから命名されました。

「George」の名を最初にヨーロッパ中に広めたのはカッパドキア出身の聖人「Georgius(ゲオルギウス)」です。彼は偶像崇拝を否定したために当時のローマ皇帝に迫害され、殉教したのですが、それから約800年後の十字軍遠征の際に現れて十字軍側を勝利に導いたなどの伝説を生み、イングランドの守護聖人とされました。「Georgius」の語源はギリシャ語の「ge(=大地)」+「ergon(=働く)」で「農夫」の意味。もともとはメソポタミアから小アジアまで広い範囲で豊饒をもたらす神として崇拝されていました。その名は「Gurziya(グルジア)」共和国の英語名「Republic of Georgia」にも残っています。

「George」の名一つ取っても、先祖から連綿と受け継がれ今なお擦り切れることも色褪せることもない「お下がり」というわけです。所ジョージも目がテン!?

(参考:『世界人名ものがたり(梅田修、講談社現代新書)』)


おまけ ― 「ge(=大地)」の名を冠する学問は「geography(ジオグラフィー=地理学)」、「geology(=地質学)」、「geophisics(=地球物理学)」と数多くありますが、その中でも最も歴史の古い学問は「geometry(ジオメトリー=幾何学)」でしょう。土地の広さなどを測る必要性から発達した学問です。この「geo」を中国で音訳したのが「幾何(チーホー)」というわけです。