アルファベットの歴史(1)
現在のラテンアルファベットの祖先はギリシャ文字、さらにはフェニキア人の発明したフェニキア文字に遡ることができます。ご承知の通り「アルファベット」とはギリシャ文字の最初の2文字「アルファ・ベータ」に由来。日本語で五十音のことを「いろは」というのと同じ発想ですね。ではそのアルファベットの変遷を2話にわたって追ってみましょう。
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フェニキア文字は子音だけを表す文字体系でした。これに対してギリシャ人が行った改革が、ギリシャ語の発音には必要無かった「Α」、「Ε」、「Η」、「Ι」、「Ο」、「Υ」の文字を母音を表すために利用したことです。さらに「Ο」の底を開いた「Ω」と、「οο」をつなげて作った小文字「ω」も付け加えています。「Ο(オミクロン)」とは「o mikron(オ・ミクロン=小さいオ)」、「Ω(オメガ)」とは「o mega(オ・メガ=大きいオ)」という意味で、それぞれ短音・長音を表し、「Ε(エプシロン)」は「e psilon(エ・プシロン=単純なエ)」、「Υ(ユプシロン)」は「y psilon(ユ・プシロン=単純なユ)」の意味で、それぞれと同じ発音を表すようになった二重母音綴り「αι」や「οι」との区別を指しています(「メガ」と「ミクロン」については「原子から宇宙まで」もご参照ください)。因みにスイスの時計ブランド「Omega(オメガ)」は、この文字がギリシャ文字の最後であることから「これ以上は無い→最高の」という意味が込められています。
後世にもギリシャ語からは自然科学や政治などの分野で多くの単語が借用されます。その際、「R」、「F」、「C」とは微妙に発音の違った「Ρ(ロー)」、「Φ(ファイ)」、「Χ(カイ)」はそれぞれ「rh」、「ph」、「ch」と綴られ、「rhythm(リズム)」、「philosophy(フィロソフィー=哲学)」、「Christ(クライスト=キリスト)」などの英単語はギリシャ語から入ったいうことがわかります。ABO式と並ぶ血液型Rh式は、その抗原が「rhesus monkey(=アカゲザル)」の血液から発見されたことから命名されましたが、サルの名前はギリシャの伝説上の王「Rhesos(レソス)」に因みます。「psychology(サイコロジー=心理学)」や「pseudo-(スード=偽の)」の綴りはギリシャ文字「Ψ(プサイ)」の面影を残しています。
→次話へつづく
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