大きな家来

ご存知のように英語の「second(セカンド)」は「第二の」の意味の他に「秒」という語義も持ちます。一見関係なさそうなこれら二つの意味の間にも、実はちゃんと関連があるのです。

本来「minute(ミニット=分)」と「second」は、時間よりはもっぱら角度を表す単位でした。すなわち1分=1/60度、1秒=1/60分です。これらの単位に対するラテン語がそれぞれ「pars minuta prima(=first small part〔英〕=第一の小さい部分)」、「pars minuta secunda(=second small part〔英〕=第二の小さい部分)」で、その省略形が「minute」、「second」というわけです。一般にはあまり使われませんが辞書を引くと「third(サード)」の項にも「第三の」と共に「秒の1/60の単位」の意味が載っています。

上の説明でラテン語「minuta」を「小さい」と訳していますが、これは「minute」が「minor(マイナー)」や「minus(マイナス)」、そして「mini-(ミニ)」の親戚であると考えると納得です。現に「minute」を「マイニュート」と読むと「微少な」という意味になりますね。これらの単語の仲間としては他に「mince(ミンス=ミンチ←細かく刻んだ肉)」、「menu(メニュー←食事の内容が細かく書かれている)」、「menuet(メヌエット←細かなステップで踊る)」があります。

日本語には「大臣」と訳される「minister(ミニスター)」も「minor」の派生語です。ラテン語「magnus(=大きい)」に由来する「master(マスター=主人)」に対するところの「召使い」がその本来の意味。イタリアの野菜スープ「minestrone(ミネストローネ)」はこの「召使い」が給仕してくれるスープのことです。「大臣」の「臣」も「家臣」「忠臣」の熟語から分かるとおり「家来」の意味…のはずなんですけどね。


おまけ ― 時間・角度どちらの場合も「分」「秒」を「mm' ss''」と表記することがあります。なぜか日本ではこの「x'」の記号を「エックス・ダッシュ」と読むのが慣例になっていますが、英語では通常「エックス・プライム」(因みにダッシュは横棒「―」のこと)と読まれます。これも「分」を表すラテン語「pars minuta prima」を思い出せばなるほどですね。ということは「x''」は「エックス・ダブル・プライム」ではなくて、「エックス・セカンド」と読むべき!?