鉛模様

鉛はその加工の容易さから、古代から利用されてきた金属です。日本語でも「黄金(こがね=金)」「白金(しろがね=銀)」「赤金(あかがね=銅)」「黒金(くろがね=鉄)」「青金(あおがね=鉛)」の「五金」に数えられています(青金が錫を指す場合もあり)。鉛は金属の中でも比重が大きいため、おもりとして使われることが多く、鉛の元素記号「Pb」が由来するラテン語「plumbum(プルンブム)」は、水深を測るため鉛を水に「プルン(≒ぽちゃん?)」と投げ込む時の音を表しているといわれます。関連して英語の「plumbless(プラムレス)」は「底知れない」という意味。また「直」は鉛を糸に吊り下げて測った方向というわけです。

腐食に強い鉛は、ローマ時代から水道管に多用されてきました。日本でもつい数十年前までは広く利用されていたのです。配管工のことを「plumber(プラマー=管工)」と呼ぶのはこのためです。ローマ帝国が衰退したのは、水道管による鉛中毒が原因だという説もあります。ところで、子供のころ、親や先生に「鉛中毒になるから鉛筆をなめるな」と怒られた方も多いと思います。しかし鉛筆の「鉛」は「黒鉛」の「鉛」で、鉛は含まれません。黒鉛は100%炭素からできた鉱物ですが、これが発見された当時はそのことが分からず、表面の縞模様が鉛に似ていることから「黒鉛」と名付けられたのです。

鉛フリーの今の時代、実際の鉛を見る機会はほとんどありませんが、鉛色の空を見ながら執筆しました。