キーボードの秘密
このページを読んでくださっている方々の目の前には大抵キーボードがあると思います。一般に使われているキーボードはその左上隅のキーの並びから「Querty(クワーティ)」配列と呼ばれますが、この配列、一体どうやって決まったのでしょうか。打つのに効率の良いように考えられたに違いない、と考えがちですが、実はそうではないのです。
容易に想像がつくようにコンピュータのキーボード配列はタイプライターのそれに由来します。初期のタイプライターは、ちょうどピアノやパソコンの初心者がやるように2本の指だけで打つことを前提としてデザインされていました。が、タイプを職業とする人が現れるなど、人間のタイピング速度が上がるにつれてタイプライターの性能がついていけなくなり、紙を打つアーム同士が絡まるなどのトラブルが多くなりました。
そこでアームの衝突を防ぐために、連続して現れることの多いアルファベット同士がなるべく遠くに配置されるようにデザインされたのが現在のクワーティ配列です。この際、タイピストのスピードを落とすためにわざとタイプしにくい配列にした、という説さえあります。また、最上段のキーは、タイプライターのセールスマンがデモの際に、この段のキーだけを用いて「typewriter」と打てるように決められた、という話もあります(確認してみてください、そうなっているでしょう?)。今のコンピュータのキーボードにとってはまったく非効率な配列なわけです。
その後、もっと効率の良いキーボード配列がいくつも提案されました。その中でも有名なのが下図の「Dvorak(ドボラック)」配列です。このキーボードの発案者の名前(作曲家「Dvorak(ドボルザーク)」と同一語源)に因みます。
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よく使われる母音をホーム列(第2列)に配しているため、日本語入力にも比較的適していると言われています。1940〜1950年代にかけてアメリカ政府はこのドボラック配列に切り替えることを検討しましたが、あまりにコストがかかりすぎるためにやめたという経緯があります。(以上参考資料:『Applying Guidelines to Interactive Technology』)
このドボラック配列のキーボード、試してみた人の話によると「文章を打ちやすいことは確かだが、カット&ペーストなどのショートカットキー(Ctrl+X, Ctrl+C, Ctrl+V)がクワーティ配列を前提に決められているので使いにくい」とのこと。カーソルをH, J, K, Lのキーで移動させるviエディタはお手上げ状態だとか。デファクト・スタンダードの怖さですね。テンキーも、なぜプッシュホンと配列が違うのだろう、と考えてみると面白いです。
最後にタッチタイプの練習用に、すべてのアルファベットを含む短文をご紹介しましょう。
The quick brown fox jumps over the lazy dog.(35文字)
日本のいろは歌のような、すべての文字をダブらずに使う、という制約はさすがに英語にとっては厳しすぎるようです。
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