アメリカ地名勢力図
# 北アメリカの地図を見ながら読んで頂けると分かりやすいです )^o^(
アメリカの地名は植民地時代の西洋各国の勢力範囲を如実に表しています。
まずはアメリカ合衆国独立時の東海岸13州、ご存知のようにイギリスの植民地でした。これらの州の名には下表のように英国王室の面々が名を連ねています。
州名 | 王族 | 説明 |
Virginia (ヴァージニア) |
Elizabeth I (エリザベスT世) |
一生結婚しなかった女王のニックネーム 「Virgin Queen(=処女王)」に因む |
North/South Carolina (カロライナ) |
Charles I (チャールズT世) |
ラテン名「Carolus(カロルス)」に因む |
Maryland (メリーランド) |
Henrietta Maria (ヘンリエッタ・マリア) |
チャールズT世の王妃 |
New York (ニュー・ヨーク) |
James II (ジェームズU世) |
即位前の称号「Duke of York(=ヨーク公)」から |
Georgia (ジョージア) |
George II (ジョージU世) |
一方、フロリダおよび西海岸からロッキー山脈に至るまでの土地を支配下に置いていたスペインは、カトリック教国らしく宗教色の強い地名を多く残しています。例えば「San Francisco(サン・フランシスコ)」は中世イタリアの修道士、聖フランチェスコの名に由来。「Los Angeles(ロス・アンジェルス)」は英語に直せば「the angels(ザ・エンジェルズ=天使、losは複数形につく冠詞)」ですが、元々は「Nuestra Señora de los Angeles de la Porciuncula(=ポルシウンクラ教会の天使の聖母)」という長い名前でした。宮沢りえの写真集で一躍有名になったニュー・メキシコ州の町「Santa Fe(サンタ・フェ)」は「saint faith(セイント・フェイス=聖なる信条)」という意味です。その他、スペイン語の名前を持つ州としては「California(カリフォルニア)」、「Colorado(コロラド、英語の「colored」にあたる)」、「Florida(フロリダ)」、「Nevada(ネヴァダ)」の4州があります。
日本では意外に知られていませんが、これらイギリスとスペインの領土の間、ロッキー山脈からミシシッピー川までの草原地帯はフランスが支配していました。フランスは五大湖から大西洋へ流れ出るローレンス川沿いに探検を進め、また南はメキシコ湾から北上して、この広大な土地の領有権を主張したのです。「Michigan(ミシガン)」や「Chicago(シカゴ)」の「ch」の発音、「Illinois(イリノイ)」や「Detroit(デトロイト)」の「oi」の綴りに、フランス語の匂いが漂います。また、中西部への入り口として栄えた「St. Louis(セント・ルイス)」は聖王と呼ばれたフランス王「Louis IX(=ルイ\世)」、メキシコ湾岸の州「Louisiana(ルイジアナ)」は太陽王と呼ばれた「Louis XIV(=ルイ]W世)」、そしてジャズ発祥の地「New Orleans(ニュー・オーリンズ)」は「Orléans(オルレアン)」家に因んで命名されています。
ではアメリカ50州のうち最も多くの州名の語源となっているのは英語?スペイン語?それともフランス語でしょうか?答えは先住民であるネイティブ・アメリカンの言葉。もちろん正確に言えば一つの言語ではありませんが、後からやってきた西洋人も地名だけは制圧できなかったわけです。
関連ページ「コインと語源で旅するアメリカ50州」
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