ワールド・ワイド・ワッフル

一時期ブームになった「ベルギー・ワッフル」、最近は耳にすることも少なくなってきましたが、今回はこの「waffle(ワッフル)」という言葉に焦点を当ててみましょう。

広辞苑によると「ワッフル」とは「パンケーキと同様の生地を格子状の凹凸のついた焼き型に挟んで焼いたもの」。こんがりと焼けた格子縞が特徴的です。英語では、底がワッフル焼き器のように凸凹したブーツのことを「wafflestompers(ワッフル・ストンパーズ)」、歩道にある地下鉄などの換気口の鉄格子のことを「waffle iron(ワッフル・アイアン)」と呼んだりします。一方同じく洋菓子の名前である「wafers(ウェイファーズ=ウエハース)」も「waffle」と語源を同じくする単語。こちらは格子模様よりもその薄さの印象が強いようで、集積回路の基板となる半導体の薄板のことを「silicon wafer(シリコン・ウェハー)」と呼んだりします。

薄くかりっと焼いたワッフルを「Waffel(ヴァッフェル)」や「gaufle(ゴーフル)」の名で売っているお菓子屋さんもありますが、どちらも「waffle」と同源の言葉で、前者はドイツ語、後者はフランス語です。「w」と「g」では随分とかけ離れているような気がしますが、「w」が「g」に変化した例には「warranty(ワランティ)」と「guaranty(ギャランティ)」もあります。どちらも「保証」という意味ですが、後者はタレントの出演料を意味する「ギャラ」の語源でもあります。他にも「ward(ワード=保護)」と「guard(ガード=監視)」、「reward(リウォード=報酬)」と「regard(リガード=配慮)」と、前者がノルマン・フランス語由来、後者が中央フランス語由来の英単語です。

さて「waffle」に話を戻しましょう。この単語の語源はというと「蜂の巣」または「蜘蛛の巣」。表面の模様はなるほど確かに蜂の巣にそっくりですね。ところで皆さんが今アクセスしている「WWW」は「World Wide Web」の略ですが、この「web(ウェブ)」も「waffle」の親戚で「蜘蛛の巣」の意味です(英語の「Weber(ウェーバー)」、「Weaver(ウィーバー)」などの姓も同根で、日本の「服部(はっとり←機織り)」さんにあたります)。つまり「WWW」は「世界に張り巡らされた蜘蛛の巣のようなネットワーク」というわけ。このちょっぴり甘い香りのする蜘蛛の巣、ハマって抜け出せなくならないようにご注意下さい。