多言語国家の憂鬱

ベルギー

同じ年に鋳造された下の二枚のコイン、同じデザインに見えますがが、よくよく見ると一箇所異なるところがあります。

5フラン(1986)
5フラン(1986)

実は、上のコインは国名が「BELGIË」とオランダ語表記になっているのに対し、下は「BELGIQUE」とフランス語で書かれています。ベルギーは、北部のフランデレン地域にオランダ語(フラマン語)系住民、南部のワロン地域にフランス語系住民が住む多言語国家であり、政府は双方に気を使って両言語のコインを発行しているのです。

5フラン(1994)

こちらの新しいバージョンの5フランはフランス語版で、国名だけではなく通貨単位もフランス語で「FRANCS」と書かれています。オランダ語版では(私は残念ながら持っていませんが)「FRANK」と表記されているそうです。

5サンチーム(1943)

もっと時代を遡って1943年のコインを見ると、国名が「BELGIQUE・BELGIE」と二言語で表記されています。でもこれでは、後ろに書かれているオランダ語系の住人から文句が出るのでは?いえいえ、大丈夫。ちゃんと「BELGIE・BELGIQUE」版も発行されていたそうです。なお、同じく言語戦争で有名なカナダは、幸いにも英語とフランス語の表記が「CANADA」と同じだったため、このような難を逃れています ^^;


おまけ ― アジアの多言語国家、シンガポールのコインには公用語である4言語で国名が表記されています。

50セント(1989)

上から時計回りに、英語「Singapore」、中国語「新加坡」、マレー語「Singapura」、タミル語が書かれています。

(2013/2/11執筆)