生年不詳
タイ他
現在発行されているほとんどの国のコインには、その発行年が記載されています。しかし、だからといって発行年がすぐに分かるとは限りません。まずはタイの50サタンコイン(=1/2バーツ)をご覧ください。
表の肖像はタイ国王です。まず難関はタイの数字です。私たちの見慣れたローマ数字ではなく、次のようなタイ文字の数字で書かれています。
0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 |
これを使ってコインに書かれている数字を解読してみます。するとなぜか「2500」と書いてあります。実はタイは仏教暦を使用しているため、西暦に直すためにはこの数値から543を引く必要があるのです。これでようやく発行年が1957年であるとわかるわけです。
お次はネパールのコインを見てみましょう。
またも文字の壁が立ちはだかります。ネパール語ではインドのヒンディー語と同じデヴァナガリ文字を用います。
0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 |
解読の結果は「2051」。西暦でも仏教暦でもなさそうですね。ネパールが採用している暦はビクラマ暦。西暦に直すには57を減じます。計算結果は1994。これなら西暦でも納得できる数値ですね。
最後はさらに複雑なイスラム圏、エジプトのコイン。
今度はアラビア文字です。通常アラビア語は右から左へと書きますが、数字の場合は左から読んで結構です。
0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 |
4桁の数字が2つ並べて書いてあって、解読結果は「1984-1404」。前者が西暦、後者がイスラム暦です。最近はイスラム圏の国もこのように西暦を併記する場合が多いようですが、もし西暦が書いてなかったらさあ大変。イスラム暦元年はムハンマド(モハメッド)がメッカからメディナに"聖遷"した西暦622年であり、かつイスラム暦は太陰暦で1年が平均354.37日しかないため、次のような計算をする必要があります。
西暦=イスラム暦×(354.37/365.24)+621
但し、月によっては1ずれる場合もあります。
これを読んで、「大変な国もあるものだ」と思っている方も多いかもしれません。でもちょっと待って、財布の中のコインを眺めてみてください。漢字も読めない、年号も知らない外国人にとっては日本のコインの方がよっぽど「生年不詳」なのです ^-^;)。
(2000/1/5執筆、2011/2/12更新)
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