月と十ペンス

イギリス

現在の世界各国の貨幣にはほとんど国名が入っていますが、かつて「日の沈まぬ国」と言われたイギリスのコインは例外。裏にも表にも国名がありません。下の写真はちょっと変わった7角形の50ペンスコイン。

50ペンス(1982)

表の肖像は当然というかエリザベス女王です。「D.G.REG.F.D」の刻印は、ラテン語の「Dei Gratia Regina Fidei Defensor」の略で、「神の恩寵による女王、信仰の守護者」という意味です。

お次は10ペンスコイン。

10ペンス(1968)

このコインをよく見ると「NEW PENCE」と書いてあります。もともとイギリスは12進法と20進法を組み合わせた1ポンド=20シリング、1シリング=12ペンスという複雑な通貨体系を持っていました。これは古代ローマで重さ1ポンドゥスの銀から240個のデナリウス(Denarius)銀貨を作ったことに由来します。しかし諸外国との通商にも支障が出るということで1ポンド=100ペンスに変更した後のペニーをニュー・ペニーと呼ぶわけです(注:ペンスはペニーの複数形)。

イギリスの作家サマーセット・モームの有名な作品に「月と六ペンス」がありますが、現在ならば「月と十ペンス」になっていたところですね。下がかつての12進数時代の3ペンス硬貨と6ペンス硬貨です。

3ペンス(1960)
6ペンス(1960)

それにしても、12ポンド15シリング9ペンスの買い物をして50ポンド札を出したらさてお釣りはいくらでしょう?なんてあまりやりたくない計算ですね。

(2000/1/1執筆、2011/2/11更新)