蛸とガソリンと10月の関係
数字シリーズ第2回は「8」の話題です。8はラテン語で「octo(オクト)」、意外と身近に転がっている言葉です。
まず思い付くのは「octopus(オクトパス=蛸)」。その名もずばり「octo(=8本の)」「pous〔希〕(=足)」です。音楽用語「octave(オクターブ)」も同一語源で「8度音階」ですね。
レギュラーよりちょっとお値段の良いガソリンをハイオクガソリンといいますが、これはガソリンに含まれるエンジンのノッキングを防ぐ物質の量を「octane(オクタン)」に換算した数値であるオクタン価が高い(=high)ガソリンのことです。オクタンの分子式はC8H18で、炭素原子が8つくっついているのでこの名があります。
ちょっとマイナーなところでは、トランプゲームの一つに「オイチョカブ」というものがありますが(私はルールを知らない)、これも「octo」に対応するポルトガル語の「oito(オイト=8)」が語源です。
さらに「October(オクトーバー=10月)」の語源も意外なことに「8」なのです。かつて西洋の一年は3月から始まっており、1月と2月は順序としては一年の終わりでした。春が一年の最初というのは極めて自然な考え方ですよね。しかし「January(=1月)」はローマ神話の神「Janus(ヤヌス)」に由来するため、「Julius Caesar(ユリウス・カエサル、ジュリアス・シーザー)」がこれは神に対して失礼だ、という事で1月を一年の初めとしたために、もともと8月だった「October」は2つ後ろにずれて10月になってしまったというわけです。ユリウスはついでに自分の誕生月である7月を自分の名に因んで改名(英語では「July(ジュライ)」)しています。こうして出来たのが有名なユリウス暦です。
このユリウスの養子であり、初代ローマ帝王である「Augustus(アウグスツス)」が負けじと自分の名を冠したのが今の「August(オーガスト=8月)」。また、当時は3月から順に奇数月は31日、偶数月は30日、最後の2月は29日とされていたのですが、自分の月が30日しかないことが不満だったアウグスツスが無理矢理8月を31日にした結果、2月は28日しかなくなってしまったのです。
この不合理な暦を改正しようと、「World Calendar(=世界暦)」なるものが提唱されています。元日を日曜日とし、1年を各91日(すなわち13週)の4半期に分け、各月は26の平日(土曜日も含む)と日曜日を含むようにします。、すると1、4、7、10月は31日、その他の月は30日で構成され、ある日にちに対する曜日は毎年同じとなるためにカレンダーを毎年買い換える必要がなくなります。但し91日×4=364日にしかなりませんから、余った1日(閏年の場合は2日)は特別な休日とする、という案。但し13日の金曜日が年に必ず4回あるという欠点があります ^^; (参考:『Calendar Reform』)。
話に収拾がつかなくなってきましたが、最後に月に関するコネタを2つ:
- ブラジルの都市「Rio de Janeiro〔葡〕(リオ・デ・ジャネイロ)」は英語に直せば「River of January(=1月の川)」。西洋人がこの地に辿り着いたのが1月でした。
- 映画で有名なソ連の原潜「レッド・オクトーバー」は10月革命に因んで命名されました。但しロシアは革命当時まだグレゴリオ暦を採用していなかったため、現在の革命記念日は11月です。
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