歴史は繰り返す

今回から3回シリーズで数字に関する話題を取り上げたいと思います。トップバッターは「1」。

江戸時代に天正カルタをアレンジした「ウン・スン・カルタ」というものがありました。名前の語源はゲームで使われるカードの名称「ウン」と「スン」から。それぞれポルトガル語の「um(ウン=1)」と「sumo(=最高)」に由来するとされています。手持ちの役が悪く「ウン」も「スン」も言えないで黙っている人に対する言葉が「ウンとかスンとか言えよ」の言い回しです。

この「um」のように、ほとんどのラテン系の言語では1を表す単語は「un」で始まります。英語にも同系の「uni(ユニ)」で始まる単語が多く見られますね。日本語にも入っている単語を列挙してみると「unicorn(ユニコーン=一角獣)」「unique(ユニーク=唯一の→独特の)」「uniform(ユニフォーム=均一の→制服)」「united(ユナイテッド=統一された)」「unit(ユニット=一個、単位)」などがあります。変わったところでは「onion(オニオン=玉ねぎ)」も同源で、その丸い形からラテン語の「unio(分けられないもの→真珠)」に由来します。日本語でも「玉」ねぎですものね。

英語の「one(ワン)」も生い立ちを遡るとこれら「un」の親戚です。冠詞の「a(ア)」や「an(アン)」もこの「one」の発音が弱まったもの。そういう意味では本来の不定冠詞の語形は「an」であって、母音の前で例外的に「an」を使うというよりは、子音の前では「a」を使う、と言った方が語源的には正しいことになります。

最後にもう一つ、イタリア語で「1」は「uno(ウノ)」と言います。「ウン・スン・カルタ」が流行らなくなって数百年後、日本で再び「UNO(ウノ)」というカードゲームが流行るとは誰が想像したでしょうか。


おまけ ― 「ピンからキリまで」も博打に源を発する言葉です。「ピン」は「1」のことで、ポルトガル語の「pinta(ピンタ=point〔英〕=点)」が語源。複数のサイコロの目が全て1のことを「ピンぞろ」と言ったりするように、もともとはサイコロ用語です。「キリ」はやはりポルトガル語の「cruz(クルス=cross〔英〕=十字架)」から。カードゲームの「十」を表します(その他にも、「キリ」という札があった、花札の「桐」に由来する、などの説があります)。今まで「ピンから錐まで」と堅く信じていた私…