ポンカレー

古く英語には果物を表す単語が「apple(アップル)」と「berry(ベリー)」の2つしかありませんでした。「apple」は従って「リンゴ」だけでなく、同程度の大きさを持つ果実全般を表す言葉だったのです。例えば「pineapple(パインアップル)」は「pine(パイン=松)」の実、すなわち「松ぼっくり」がその本来の意味。現在はその形が似ていることから南米原産の果実である「パイナップル」を主に意味するようになりました。英語では「手榴弾」の俗語としても使われます(因みに「手榴弾」の「榴」の字は「ザクロ」の意味)。

一方、ラテン語で「リンゴ」は「pomum(ポムム)」。男性用整髪剤「pomade(ポマード)」は元来リンゴを原料に作られていました。「pomum」も「apple」同様、様々な植物の実を意味します。「pomme de terre〔仏〕(ポム・ド・テール=土のリンゴ)」は「ジャガイモ」、「pomegranate〔英〕(ポムグラナト=種の多いリンゴ)」は「ザクロ」、「pomodoro〔伊〕(ポモドーロ=金のリンゴ)」は「トマト」のこと。「トマト」はまた、フランス語で「pomme d'amour(ポム・ダムール=愛のリンゴ)」、ドイツ語で「Paradeisapfel(パラディースアプフェル=天国のリンゴ)」とも呼ばれます(ドイツ語の「Apfel」は英語の「apple」に対応)。

「愛媛のまじめなジュース」のキャッチフレーズでお馴染みの「ポンジュース」。「ポン」は元々「ニッポン」の「ポン」から取ったとのことですが、「pomum」の派生語「pomelo(ポメロ=ブンタン)」や「pomology(ポモロジー=果樹園芸学)」とかけて「PON」ではなく「POM」と表記しているようです。でも実は地元の方言で「ぽん」というと「う○こ」のことなのだとか。レトルトカレーの商品名でなかったのが何よりの救いです。 (-_-;)


おまけ ― アダムとイブが食べた禁断の果実。リンゴとして描かれることが多いですが、本来はイチジクだったという説があります。彼らが果実を食べた後、裸であることを恥ずかしがって腰にあてたのもイチジクの葉だと言われます。