オウムの正体
「navy blue(ネイヴィー・ブルー)」といえば「濃紺色」の意味。「navy」とは「海軍」の意味で、かつて世界の海を征していたイギリス海軍の制服の色に因みます。「navy」の語源はラテン語の「navis(ナウィス=船)」。「カーナビ」等の「navigation(ナヴィゲーション)」も元々は「航海術」の意味で同語源の単語です。
この「navy」の先祖がギリシャ語の「naus(ナウス=船)」。その派生語「naut(=船乗り)」には、「astronaut(アストロノート=宇宙飛行士)」、「aquanaut(アクアノート=潜水夫)」などの複合語があります。ジュール・ヴェルヌの作品「海底二万里」に登場する潜水艦「Nautilus(ノーチラス)」号は、熱帯の海底に棲む「オウムガイ」の意味。その堅い殻にあやかって命名したのでしょうか。英名「nautilus」はこの生物の背部にある水かきのついた腕が帆として使われたと信じられていたことから、和名「オウムガイ」の方はその形が鸚鵡のくちばしに似ているところから、それぞれつけられました。
ご存知「風の谷のナウシカ」の主人公「Nausicaa(ナウシカ)」の名も、直接にはギリシャの叙事詩「オデュッセイア」に登場するパイキアの王女の名前に因みますが、語源は同じく「naus」に関係があります。このアニメでは空を飛ぶ「船」や、「Möwe〔独〕(メーヴェ=かもめ)」という名の翼状の飛行用乗り物など、空と海を融和させた世界が繰り広げられますが、話の中で重要な役割を演じる「王蟲(オウム)」という生物のモデルも「オウムガイ」では無かろうか、というのが私の想像。作者の宮崎氏自身は「オウム」の発音は「王虫」、「大虫」、「worm(ウォーム=虫)」、「aum(オウム=仏教の教えの一つ)」等に因むとおっしゃっているそうですが、百科辞典でオウムガイの絵を見ると、その殻といい触覚といい「王蟲」のモデルにピッタリです。宮崎さん、もしこれをお読みでしたらぜひ真偽を教えてください 。
何てことを考えながら本を読んだり映画を見たりするのも、語源ヲタクの楽しみの一つなのでした 。
おまけ ― 「noise(ノイズ=騒音)」も同根の単語。「船酔い」→「不快」→「うるさい」と意味が変化しました。
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