"ピー"酒

中国語が他の言語の単語を取り入れる方法には、「電脳いまむかし」でご紹介したような意訳によるもの以外にもう一つ、音を真似る方法があります。「亞美利加(アメイリジャ)」のように単語全体を綴る場合もありますが、面白いのが「先頭の音を表す漢字+概念を表す漢字」で作られた熟語たちです。

この製法による日本でもポピュラーな例は国名。但し日本では「米国」、「仏国」、「独国」と書くところを中国ではそれぞれ「美国(メイグオ)」、「法国(ファーグオ)」、「徳国(ダーグオ)」と呼びます。アメリカが「美国」というのは褒めすぎのような気がしますが、これは「美利堅(メイリージァン)合衆國」の略。日本語の「メリケン」と通じるところがあって面白いですね(参照:「日本人の耳」)。

温度を表す「華氏」、「摂氏」もこのような外来語の仲間。「氏」は日本語と同じく「Mr.」を表す漢字です。「華」は「華倫海(ファールンハイ)」、「摂」は「摂爾修斯(シャルシウシ)」のそれぞれ頭文字で、創始者の「Fahrenheit(ファーレンハイト)」、「Celsius(セルシウス)」を表しているわけです。

日本語の「関数」は中国語の「函数(ハンシュー)」を意訳したものですが、本来の「函」は英語の「function(ファンクション)」を音訳したもの。「安山岩」の「安山(アンシャン)」は「アンデス」のこと、と日本語に入っているものだけでもいろいろな例があります。

しかしやはり一番の傑作は「ビール」を意味する「≪口偏に卑≫(ピージュー)」。本来の「b」が「p」に変化していますが、これが英語のネイティブスピーカーには大受けです。なぜかと言うと英語で「pee(ピー)」と言えば「おしっこ」のことだから。確かに色といい、泡の立ち具合といい…、えっ、そこまで言わなくてもいいって?おあとがよろしくないようで…_(_"_)_


おまけ ― 「函数」は「function」のブラックボックス的な役割も汲み取った名訳なのですが、日本では「函」の字が常用漢字に無かったために、最近は「関」にすっかり置き換えられてしまいました。でも「関」の中国語読みは「グアン」であるため、音の面でも「function」とは程遠いものとなっています。