帝王サラダ

「帝王切開」という単語があります。普段何気なく(?)使っているこの言葉、良く考えてみると「帝王」って一体誰なんでしょう?(ヒント:トランプのダイヤのキングのモデルと言われています)

答は「蛸とガソリンと10月の関係」に登場した「Julius Caesar(ユリウス・カエサル、ジュリアス・シーザー)」。「帝王切開」は英語の「Caesarian section(シゼリアン・セクション)」の訳です。この手術がなぜそう呼ばれるようになったかには2つの説があって、1つ目はカエサル自身がこの方法によって生まれたという説。もう1つはラテン語で帝王切開を表す「sectio caesarea」をドイツ語に訳す際に、「caesarea(=切る)」を「Caesar」のことと勘違いして誤訳してしまったという説。「carsarea」は英語の「scissors(シザーズ=はさみ)」と同源です。

「caesar」は後にローマ皇帝を意味する一般名詞となります。西ローマ帝国の帝冠を受け継いだ神聖ローマ帝国の皇帝「Kaiser(カイザー)」と、東ローマ帝国(ビザンティン帝国)皇帝の後を継ぐという意味のロシア皇帝の呼称「czar(ツァーリ)」は、どちらも「caesar」が変異したものです。両端がピンとはねあがったような形の口髭をカイゼル髭と呼びますが、これはドイツ帝国の皇帝ウィルへリム二世の髭に因みます。

しかしシーザーと言ってまず思い浮かぶのは、レタスにニンニク・ドレッシングとパルメザン・チーズをかけて作るあの「Caesar salad(シーザー・サラダ)」ですね。が、これはカエサルと直接は関係なく、このサラダを考案したイタリア人シェフ「Caesar Cardini」氏の名に由来します。(参考文献:『Epicurious eating dictionary』)