演算詞

「一日中ずっと」を意味する「四六時中」の表現、ご存知のように一日24時間を4×6=24と掛け算で表したものです。時を十二支を使って辰刻法で表していた時代には「二六時中」と言っていました。今回はそんな「演算詞」たちを集めてみました。

「六六魚」とは「鯉」の異名。鯉には鱗が36枚あるところからこの名がつきました。さらにこの魚に、魚偏に里を書く「鯉」の漢字が当てられたのは1里=36町であったからという説もあります。「里」と言えば、「濁り酒」を「二五里」に掛けて「十里」と呼ぶ例もありますが、やはり有名なのが「十三里」。日本には江戸時代初期に伝わった薩摩芋の別名ですが、初めは栗(九里)に近い美味という意味で「八里半」と控えめに(?)呼ばれていました。それが焼芋屋のキャッチコピー「栗より(九里四里)うまい十三里」により「十三里」に昇格したというわけ。薩摩芋の産地である川越の江戸からの距離が約十三里だったから、との説もあります。

「十三屋」といえば「櫛屋」のこと。「九四(くし)」では縁起の悪いことから考えられた異名です(キリスト教世界では逆に縁起が悪いですが…^^;)。一方で「一六銀行」と言えば1+6=7で「質屋」のこと。こちらは「質」では体裁が悪いことから考えられた言い回しでしょう。本物の銀行にも今は亡き第一勧銀を筆頭に数字の付く名前を持つものが少なからずありますが、長野を本拠地とする「八十二銀行」は「第十九銀行」と「六十三銀行」が合併して出来た足し算銀行。「第三十四銀行」、「第十三銀行」、「第百四十八銀行」の三行が合併してできた「三和」銀行は、同じ理屈でいけば「百九十五銀行」ということになりますね(ナンバー銀行についてもっと詳しく知りたい方は『語源探偵団』の『全国ナンバー銀行リスト』をどうぞ)。


おまけ ― 愛媛県松山市の名物「一六タルト」にはどんな意味があるのだろう?と調べてみたところ、製造元の一六本舗が明治十六年創業だということです。