パン食い仲間
アメリカの伝統ある会社には、例えば「Tiffany & Co.」や「J.P.Morgan & Co.」のように、しばしば「& Co.」という接尾辞がつきます。「Co.」はお察しのとおり「company(カンパニー)」の略。今でこそ「会社」と訳されることが多いですが、元々は「仲間」という意味。つまり「Tiffany & Co.」は「ティファニーとその仲間たち」が集まって作った会社です。この「company」という語は「com-(=共に)」+「pan(=パン)」から成り、原義は「共にパンを食べる仲間」。つまり「Tiffany & Co.」は「ティファニーと、共にパンを食べる仲間たち」、日本語風に言えば「ティファニーと、同じ釜の飯を食う仲間たち」というわけです。近頃はもっぱら展示会での女性案内係を指す「companion(コンパニオン)」も本来は「仲間」の意味。また、「合コン」「追いコン」などの複合語でもお馴染みの「コンパ」も「company」の省略形で、こちらは共に「液体パン」ならぬビールを飲む会ですね。さらに「company」には「accompany(アカンパニー=(仲間と)同行する)」という派生語もあります。
ところで「& Co.」と似た発想の社名に「& Sons(…と息子たち)」や「& Brothers(…と兄弟たち)」があります。ハリウッドの映画会社「Warner Bros.(ワーナー・ブロス=ワーナー兄弟)」やライブドアによるTBS買収劇で一躍有名になった投資会社「Lehman Brothers(リーマン・ブラザーズ=リーマン兄弟)」もその仲間と言えるでしょう。「Johnson & Johnson(ジョンソン・エンド・ジョンソン)」も実はジョンソン三兄弟が起こした会社です。日本にはその名もずばりの「ブラザー工業」がありますが、かつての社名は「安井ミシン兄弟商会」でした。
話をパンに戻しましょう。日本語の「パン」は元々ポルトガル語の「pão(パン)」を輸入したものです。イタリア風サンドイッチ「panini〔伊〕(パニーニ)」、ドライフルーツ入りのクリスマス用菓子パン「panettone〔伊〕(パネトーネ)」、中南米風の揚げパン「empanada〔西〕(エンパナーダ)」など、日本でもお馴染みのパン料理の名前にも「パン」が隠れていますね。でも騙されてはいけないのが「pancake(=パンケーキ)」。パンのようにフワフワのケーキ…という訳ではなく、「frying pan(=フライパン)」で焼いたケーキという意味ですのでお間違いなく。
おまけ ― 「classmate(クラスメイト)」や「roommate(ルームメイト)」などの「mate(メイト)」もその語源は「共に食事をする仲間」。「meat(ミート=肉)」の兄弟にあたる単語です。
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