ラ・ニーニャ

神や偉人の名を直接口にすると恐れ多いと思うのは世界各国どこも同じ。例えばよくある「○○ノートル・ダム女学院」の「ノートル・ダム」というのはフランス語で「notre(=our〔英〕=私たちの)」「dame(=lady〔英〕=女性)」すなわち歳暮、じゃなくて聖母(う〜む罰当たりな変換ソフトだ)マリアをさす間接的な表現です。英語で「マリア」にあたる「Mary(メアリー)」は、今でこそ女性の名としてポピュラーですが、それまでは恐れ多いということでほとんど使われていませんでした。因みに16世紀のフランスの予言者「Nostradamus(ノストラダムス)」は、本名「Notredame(ノートルダム)」をラテン語風に読み替えたものです。

皆さんお馴染みの「エル・ニーニョ」現象。南米ペルー沖で夏の間水温が異常に高くなる異常気象ですが、スペイン語で「el(エル)」は英語の「the」にあたる定冠詞、「niño(ニーニョ)」は「child」の男性形ですので、「その男の子」=「神の子」=「イエス・キリスト」のことです(だから普通は大文字で「El Niño」と書きます)。この異常気象が特にクリスマスの時期によく発生するために(南半球ではクリスマスは夏真っ盛りです)地元の漁師たちがこう名付けたのだとか。今ではあまり良い現象とは思われていませんが、地元の人たちにとっては漁獲量は減るものの珍しい魚が獲れたり果物が豊作だったりするので、元来は感謝の意味でつけられた名前です。

さて、今年(1998年)はこのエル・ニーニョ現象とは逆に、水温が異常に低くなる「ラ・ニーニャ」現象が起こるのだとか。「la(ラ)」は女性名詞用の冠詞、「niña(ニーニャ)」は「niño」の女性形で、エル・ニーニョとは逆の現象、という意味が込められています。1995年に米国の学者によって命名されたばかりの新語です。それにしても、現在カナダに住んでいる私にとっては今年は厳しい冬になりそうです(;_;)。