愛、それは…

今回は、「愛」について語ってみましょう ^^;。

英語で「愛」はもちろん「love(ラヴ)」ですが、テニスで「love」といえば何故「0点」を意味するのか、ご存知の方は少ないのではないでしょうか?これは「for money(=金のために)」に対して「for love(=好きで、無料で)」という表現があり、ここから「for love」=「for nothing」すなわち「love」=「nothing」=「0点」の等式が導かれたからです(「0」の形からフランス語の「l'oeuf(ルフ)」=「le(=冠詞)」+「oeuf(ウフ=卵)」が語源という説もあり)。同じゲルマン語系のドイツ語で「love」にあたる語は「liebe(リーベ)」。雪印のアイスクリーム「Liebender(リーベンデール)」はこの単語から派生した「恋する人」の意味。1600年にウィリアム・アダムズ(三浦按針)が乗ってきた「liefde(リーフデ)」号もオランダ語で「愛」の意味です。

一方でラテン語の「愛」を意味する単語「amor(アモール)」から派生した言葉も多くあります。モーツァルトの謎の死を描いた映画「Amadeus(アマデウス)」はモーツァルトのミドル・ネームですが、原義はラテン語で「amare(=愛する)」+「deus(=神)」=「神の愛」です(映画をご覧になった方はナルホドと思われるでしょう)。「l'amant(ラマン)」という映画もありましたが、これはフランス語「amant(アマン=愛人)」に冠詞がついたもの。さらに時代を遡ると、中森明菜のヒット曲「ミ・アモーレ」というのもありました。これは何語かは謎なのですが、おそらく「私の愛」のような意味でしょう。「ami〔仏〕(アミ=友達)」、「amigo〔西〕(アミーゴ=友達)」も同じ語源を持つ言葉。「愛する人」=「友達」というわけです。「萌奈実(モナミ)」という女性の名前があるけれど、あれはフランス語の「mon ami(モナミ=私の友達)」に掛けているのではなかろうか?というのは私の勝手な憶測です(これを書いた後、読者の方から「私の娘の名前はこの意味でつけました」というメールを頂きました)。

英語にも「amateur(アマチュア)」という単語が同根の言葉として輸入されています。「好き」なことがアマチュアの第一歩というわけです。「professional(=プロ)」に対する「amateur(=アマ)」というわけで、「for money」に対する「for love」と発想が似ている所が面白いですね。

ではここで、ヨーロッパ各語の「愛してる」をご紹介しましょう。

言語 綴り 発音
ゲルマン系 英語 I love you. アイ・ラヴ・ユー
ドイツ語 Ich liebe dich. イッヒ・リーベ・ディッヒ
ラテン系 フランス語 Je t'aime. ジュ・テーム
イタリア語 Ti amo. ティ・アモ
スペイン語 Te amo. テ・アモ

その他の言語の「愛してる」は『alt.romance FAQ』をご参照ください。

スペイン語では「Te amo.」の代わりに「Te quiero.(テ・キエロ)」とも言います。「querer(ケレール)」は「欲する」の意味なので、「Te quiero.」は「あなたが欲しい」。これまた随分ダイレクトな表現ですね。但し動詞と目的語を引っくり返して「Quiero té.(キエロ・テ)」と言うと一転して「紅茶が欲しい」の意味に早変わり。喫茶店でのご注文の際にはくれぐれもお間違えなきよう…


おまけ ― テニスの点数は0→15→30→40と変わった数え方をしますね。この点数制の由来には諸説あるようですがそのうちの一つによると、本来は時計の文字盤よろしく0→15→30→45とカウントアップしていたのですが、最後の「forty five」が短縮されて「40」になったということです。