東方検分録
中学生の頃、2つの似た単語「orienteering(オリエンテーリング)」と「orientation(オリエンテーション)」が頭の中でごっちゃになっていたのは私だけでは無いはず。担任の先生に「明日は新入生オリエンテーションが講堂であるからな。」と言われたりすると、講堂の中で皆で地図とコンパスを持って歩き回っている光景が頭の中をいつもよぎったものです。これらの単語の共通の祖先は「orient(オリエント)」。本来は「太陽の昇る方向」の意から「東方」を表す単語です。かつて東は北よりも重要な方位で、建物は東向きに建てられ、地図も東を上にして描かれていたのです。このことからコンパスを使って方向を見出すゲームが「orienteering」、新入生たちに進むべき方向を教える行事が「orientation」というわけです。その一方で中国語では似たような意味の「指南」という言葉があるのが面白いですね(古代中国で使われた方向を指し示すカラクリ仕掛けの装置「指南車」に端を発する「指南」という言葉がありますが、英語の場合はつまり「指東」なのです)。英語で「He has no sense of orientation.」と言えば「彼は方向音痴」の意。また、コンピュータ用語の「object-oriented」は「オブジェクト指向」と訳されています。
「オリエント文明」といえばエジプト周辺で花開いた文明、「オリエント急行」といえばトルコ行きの豪華列車を指すように、「orient(オリエント)」は地中海の東側からせいぜい中近東辺りまでを指す単語でした。西洋人にとっての世界が次第に東に広がった結果、今では「orient」は「東洋」すなわち「アジア」を指すまでになり、オリエント急行はタイのバンコクとシンガポール間にも走っています。プロ野球チームブルーウェーブのオーナー「オリックス(元オリエント・リース)」やオリコカードの発行元「オリコ(オリエント・コーポレーション)」のように、「オリエント」を社名に含む日本の企業もありますね。オリコのマークが太陽をデザインしたものだというのも合点が行きます。ではヒットチャートで有名な「オリコン」は「oriental contest(オリエンタル・コンテスト=東洋コンテスト)」の略か!?…と思ったらそうではなくて「original confidence(オリジナル・コンフィデンス=独創的な信頼?)」だということです ^_^;)。
おまけ ― あまり使われませんが「orient」の反意語は「occident(オクシデント)」。こちらは北米を範囲におさめ「欧米」の意味にも使われます。
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