松もびっクリ

栗のおいしい季節がやってきました。今回は栗に関する語源談義です。

「栗は英語で何と言う?」と聞かれて、「マロン!」と答えてしまう方も多いかもしれませんが、「marron(マロン=栗)」は実はフランス語。本来は、パリのシャンゼリゼ通りの街路樹としても有名な「marronnier(マロニエ=セイヨウトチノキ)」の実の意味です。一方の英語で「栗」は「chestnut(チェスナット)」。同根の楽器「castanet(カスタネット)」はその形が栗の実に似ていることから名付けられました。

日本語の「栗」に由来する言葉で数奇な運命を辿るのは「その手は桑名の焼蛤」で有名な「蛤(はまぐり)」。「浜」に落ちている「栗」のような形をした貝という意味です。この蛤の貝殻を使った貝合わせの遊びからの連想で、物事が食い違うことを「ぐれはま(はまぐりの逆)」と呼んだところから、「グレる」という俗語が生まれました。「愚連隊」という言葉もこの「グレ」に派生するものです。

ところで「松ぼっくり」もきっと「栗」の仲間だ、と思ってしまうかもしれません。しかしこちらは「松ふぐり」が転じたものとされています。「ふぐり」とは「陰嚢」すなわち「きんたま」のこと。広辞苑で「まつぼくり」を引いても「松陰嚢」の表記が採用されています。因みに「イヌノフグリ」という植物がありますが、こちらは二つくっついた果実の形状が命名者の想像力をかきたてたようです。


おまけ ― 弥次さん・喜多さんの珍道中でお馴染みの「東海道中膝栗毛」、でも「膝毛」って一体何でしょう?「栗毛」とは「栗毛の馬」のことを指し、膝を馬の代わりとして徒歩で旅行することを「膝栗毛」と呼んだのです。