進化する石

元素番号20の軽金属「calcium(カルシウム)」。かつては健康に欠かせないミネラルの代名詞のように使われ、「カルピス(1918年発売、←カルシウム+サルピス、サルピスはサンスクリット語で醍醐味の意)」や「カルケット(1920年発売、←カルシウム+ビスケット」、「カルビー(1954年社名変更、←カルシウム+ビタミン」などの社名・商品名を生み出しています。カルシウムは1808年、イギリスの科学者によって石灰から抽出され、ラテン語の「calx(カルクス=石灰)」からの造語として名付けられました。

黒板に文字を書く「chalk(チョーク)」も「calx」の仲間。洋裁の時に印をつけるために利用する「チャコ」は、この「チョーク」が訛ったものです。水道水の消毒剤「カルキ」は、同源のオランダ語「kalk(カルク)」が語源。カルキは別名さらし粉と呼ばれ、塩素を消石灰に吸着させたものです。

話は逸れますが、西洋の子音「k」を含む単語が日本語に外来語として取り入れられる際には、最近でこそ「ク」と表記・発音する場合がほとんどですが、早い時代に取り入れられた言葉には「チャ」、「カル」のような様々なバリエーションがあります。

表記・発音
ラン(kraan〔蘭〕)
ステッ(stick)リスト(Christo〔葡〕)
スティッ(stick)、トラッ(truck)
^-^;)
トロッ(truck)ロッケ(croquette〔仏〕)

「ケ」に関しては、「cream(クリーム)」、「creosote(クレオソート)」のことを「レム」、「レオソート」などと呼んでいた時代もあったようですが、残念ながら今日まで生き残っている単語は思い付きませんでした(見付けた方は教えて下さい)。「ク」の用例には表記・発音によって意味の変わる単語を挙げてみました(参考:「カタカナ語の魔術」)。

閑話休題。「calx」の仲間としてもう一つ、「calculate(カルキュレート=計算する)」があります。古代、そろばんの玉として石灰質の小石を用いたことに由来する言葉です。パソコンの頭脳であるCPUのことを、業界で「石(いし)」と呼んだりしますが、現代の技術の粋を集めて設計されたCPUも、その内部で行われている処理の原理は、電荷の石をはじく「電荷式そろばん」です。現在、21世紀の新型そろばんとして「量子式そろばん」、「DNA式そろばん」などの研究が進められています。