小部屋談義
表計算ソフトのマス目のことを「cell(セル)」と呼びますが、この「cell」の原義は「部屋」。ワインを保存する貯蔵室は「cellar(セラー)」ですね。「cell」は電池を意味することもありますが、これは電池が複数の小部屋に分かれている構造をしているから。和製英語の「cell motor(セル・モーター)」は、バッテリーを使ってエンジンを始動させる装置です(「self starter motor(セルフ・スターター・モーター)」の略という説もあります)。変わったところでは携帯電話を意味する「cellular phone(セルラー・フォン)」の「cellular」も部屋の意味。地域を複数の領域に区切って基地局を設置し、通信を行う方式に由来します。
「cell」の最も代表的な意味は、生物の体を小部屋状に構成する「細胞」でしょう。ライフサイエンス分野で最も有名な学術誌はその名もずばり「Cell」。植物の細胞壁の主要成分である「cellulose(セルロース)」、セルロースを分解する酵素「cellulase(セルラーゼ)」、セルロースから生成される「cellophane(セロファン)」や「celluloid(セルロイド)」といった化学物質の名前も「cell」由来です。なお、「セル画」の「cel(セル)」は、セルロイドが略されたものです。
さらにセロファンからは、ニチバンの登録商標「Cellotape(セロテープ)」や、英国のブランド名「Sellotape(セロテープ)」が生まれています。でもアメリカでは「セロテープ」と言っても通じませんので悪しからず(関連ページ:「スコットランド異名譚」)。
おまけ ― 「celluloid(セルロイド)」の語尾「-oid」は、「…に似た」という意味の接尾辞。「colloid(コロイド←膠に似た)」、「android(アンドロイド=人造人間←人間に似た)」、「Mongoloid(モンゴロイド=蒙古人種←モンゴル人に似た)」といった例があります(コロイドについては「愛すべきゼリー」もご参照ください)。
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