原料いろいろ
人類は古代から様々なものを使って「色」を作ってきました。このことは色を表す言葉にも表れています。
例えば「むらさき」は同名の植物の根から作った染料の色。この植物が群がって花を咲かせることから「群ら咲き」に由来することを知れば納得です。「くれない」も植物由来の色。この花が当時あまりに高価だったため、人に頼んでもなかなか「くれない」んですよ、これがまた…というのは冗談で、その語源は「呉の藍」、今で言うところの紅花のことです。「紅」と「藍」では全然色が違うのに?と思ってしまいますが、藍が染料を代表する植物だったために、呉の国から渡来した染料作物という意味でこのように呼ばれたのです。
「べんがら」という赤い顔料がありますが、こちらは鉱物から採った色。「弁柄」という字を当てたり「紅殻」と書いて「べにがら」と読んだりもしますが、鉄分を多く含む土を産するインド東部の地名「Bengal(ベンガル)」に由来します。弁柄はまたの名を「インド赤」とも呼びますが、実は「インド黄」という色素もあって、こちらは何と、マンゴーの葉を食べさせた牛のおしっこから作る顔料なんだとか。インドの名を冠する「indigo(インディゴ=インジゴ)」(参照:「太陽の沈まぬ地名」)という色もある訳で、インドはなかなかカラフルな国ですね。
西洋の色もその原料は多彩です。「sepia(セピア←イカ)」はイカ墨を乾燥させて作り、「purple(パープル←貝)」は地中海に棲む巻貝の内臓から抽出し、「carmine(カーマイン=洋紅色←カイガラムシ)」はカイガラムシを潰して取り出します。そう考えると色の歴史は、生物の大量虐殺の歴史でもあるかもしれません。
おまけ ― ベンガルとは現在のバングラデシュとインドの西ベンガル州を含む範囲を指します。バングラデシュはかつては英領インドの一部(東ベンガル州)だったのですが、イスラム教徒が多かったために東パキスタンとして独立し、その後パキスタンからも独立したという経緯を持ちます。「Bangladesh(バングラデシュ)」の国名自体が「Bengal人の国」という意味です。因みに「bungalow(バンガロー)」も「Bengalの」という意味で、この地独特の建築様式を表す言葉です。
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