生まれはギニアか天竺か
アフリカ西部の沿岸地方を指す地名「Guinea(ギニー=ギニア)」。ギニア共和国、ギニアビサウ共和国、赤道ギニア共和国の国名にも含まれています。語源は諸説あってはっきりしないのですが、ヨーロッパ人にとって「Guinea」とはサハラの向こう側の黒人が住む地域を漠然と表す言葉でした。西太平洋に浮かぶ世界第二の広さを誇る島「New Guinea(=ニューギニア)」の名も、この地に上陸したスペインの探検家が、島の住民の黒い肌からアフリカの黒人を連想して「Nueva Guinea(ヌエバ・ギネア=新しいギニア)」と名付けたことに由来します。
さて、イギリスは1970年代まで1ポンド=20シリング=240ペンスという複雑な通貨体系を持っていましたが、さらにこれに加えて「guinea(ギニー)」という21シリングに相当する単位もありました。ギニーは元々ギニア地方で産出した金を用いて20シリングすなわち1ポンドの価値を持つ金貨として鋳造されたのですが、金含有量の誤りのためにその価値は変動し、1717年に1ギニー=21シリングと公定されました。今でもイギリスでは貨幣こそ無いものの、弁護士や医者への謝礼などの単位としてこのギニーの概念が残っています。
英語で「guinea pig(ギニー・ピッグ)」とは、日本で俗にモルモットと呼ばれる愛玩用もしくは各種実験用の囓歯類のこと。原産地は実は南アメリカなのですが、この動物を初めてイギリスへもたらしたのがアフリカ経由の船舶だったためにこのような名前になってしまいました。南米北東部の地名「Guiana(ギアナ、ガイアナ)」がギニアと混同された、という説もあります。アンデス地方ではこの動物を「cuy(クイ)」と呼び、古くから家畜化して食用としていたために「pig(=豚)」の名が付いたとも言われています。
このギニアピッグですが、日本では明治時代に学会が動物名の和名統一をはかるために「天竺鼠」という名を当てました。中国よりも遠い国からやってきた、というニュアンスでしょうか。他にも天竺シリーズには「天竺豆」、「天竺牡丹」、「天竺葵」といった植物名があるのですが、何のことだか分かりますか?それぞれソラマメ、ダリア、ゼラニウムの別名です。
モルモットについては日本実験動物協会の
『肩の凝らない「動物のはなし」』が非常に詳しいです。
おまけ ― 唐辛子などを入れてとびきり辛くした味噌のことを「天竺味噌」と呼んだりするそうですが、これは「辛すぎる」を「唐過ぎる」、すなわち中国を越えて天竺まで行ってしまうという意味に掛けた言葉遊びです。
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