£4のケーキ
ついにヨーロッパ統合通貨「euro(ユーロ)」の流通が始まりました。しかしイギリスは大陸に対する独自性を支持する世論のため、当面その通貨単位「pound(パウンド=ポンド)」を使い続けています。ポンドは重さの単位でもあるわけですが、本来は1ポンドの重さの銀に相当する価値を表していたのがこの通貨の名の由来です。さらに語源を遡ると「pendant(ペンダント)」などの派生語を持つラテン語「pendere(ペンデーレ=ぶらさげる)」に行き着きます。すなわち「ぶらさげて量った重さ」というわけです。(関連ページ「月と十ペンス」)
ところで、通貨単位のポンドを表すのに「£」、重さの単位を表すのには「lb.」という記号がしばしば使われます。でも「pound」なのに一体なぜ「L」なのでしょうか?実はこの表記、ラテン語で「天秤」を表す「libra(リブラ)」の略なのです。英語でも「Libra」と言えば「てんびん座」の意味。イタリアの通貨単位「lira(リラ)」もこの「libra」が変化した語です。
ポンドは日本人にとってはあまり馴染みの無い単位ですが、スーパーで売っているバター1箱、以前は半ポンドすなわち225gの製品が主流でした。ところが最近は200gのものがほとんど。明治乳業がそれまでの標準を破って200gのバターを販売したところ、消費者が25gの違いに気付かずに(当然ながら)価格の安い明治のバターを購入したため、他のメーカーも200gに変更せざるを得なかった、という経緯があります。
ポンドには馴染みは無くても「pound cake(パウンド・ケーキ)」なら皆さんご存知ですね。バター、卵、小麦粉、砂糖の各材料を1ポンドずつ混ぜることからこの名がつきました。因みにこのケーキ、フランス語でもその配合から「quatre-quarts(キャトル・カール)」、すなわち「1/4が4つ」と呼ばれ、日本語には「四同割」と訳されています。
では今回はポンドにまつわる諺をいくつか紹介して締めくくりましょう。最初の3つが通貨の単位、残りは重さの単位として使われています。因みに1ポンド=16オンス≒450gです。
諺 | 意味 |
Penny wise and pound foolish. | 一文惜しみの百文失い 安物買いの銭失い |
In for a penny, in for a pound. | 1ペニー狙うなら1ポンド狙え 一旦やりかけたことは最後までやり通せ |
get one's pound's worth | 自分が支払ったものを取り返す |
a pound of flesh | 肉1ポンド (ベニスの商人から)合法的だが苛酷な要求 |
An ounce of mother wit is worth a pound of clergy. |
1オンスの才能は1ポンドの学識に勝る 落ちたあとで高みを恐れる |
An ounce of prevention is worth a pound of cure. |
わずかな予防は万の治療の労を省く 転ばぬ先の杖 |
An ounce of practice is worth a pound of preaching. |
一の実行は百の説教に勝る |
Mischief comes by the pound and goes away by the ounce. |
災害はどっとやって来て、 わずかずつ去っていく |
おまけ ― プッシュホンのキー「#」、日本では音楽用語で「シャープ」と言うことが多いですが、英語では「pound key(パウンド・キー)」と呼びます。これは「20#」と書いて20ポンドの重さを意味する表記法に基づくもので、今でも紙の重さを表すために使われることがあります。
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