青春と晩年

日本語で「May Day(メイ・デイ=メーデー)」といえば「労働祭」ですが、本来は西洋で5月1日に行われた春の訪れを祝うお祭りのこと。「Maypole(メイポール)」と呼ばれる棒を立て、「Mayflower(メイフラワー=さんざし)」の花やリボンを飾り付け、その下に女性の中から選び出された「May queen(メイ・クイーン)」を座らせて、若者たちが踊りまわる行事でした。未婚の女性から斎王代を選出する京都の葵祭を思い起こさせますね。

この「Maypole」は男根を象徴するという説もあります。「Mayflower」はしばしばアメリカの国花的な役割を果たしますが、理由はもちろん1620年にニュー・イングランド最初の植民地を拓いた清教徒たちが乗ってきた船の名前が「Mayflower」号だったから。「May queen」は日本では「男爵」と並ぶジャガイモの品種として有名ですが、この品種名を表す場合は「メークィーン」でも「メイクイン」でもなく「メークイン」とするのが正しいとのこと。一方の男爵薯の名前は明治末期にアメリカからこの品種を導入した川田男爵に因みます。(以上参考:『英語語法大事典』(大修館書店)他)

映画などで救助を求める場面で「メーデー、メーデー」と連呼していることがありますが、これも英語では「Mayday」と綴られます。但しこの単語は五月祭とは何の関係もなく、フランス語の「m'aider(メデ=助けて、英語に直訳すれば「aid me」)」を音訳したものです。

さて、英語の「May(メイ=五月)」は「青春」の意味で使われることもあります。話はそれますが「青春」の「青」は五行説で春にあてられる色。因みに他の季節は「朱夏(しゅか)」、「白秋(はくしゅう)」、「玄冬(げんとう←玄は黒のこと)」となります。大相撲の土俵の上にぶら下がっている房の色もこの4色。「白秋」は詩人「北原白秋」のペンネームにもなっています。閑話休題、「青春」の意味での「May」の面白い用法を一つご紹介すると「May-December affair(またはmarriage)」。若い女性と年配の男性の恋愛(または結婚)のことを指します。


おまけ ― 英語で「mayfly(メイフライ)」といえば「カゲロウ」のこと。一方日本語で「五月蝿」と書くと「うるさい」。存在感が全然違いますね。