とっても大事な人
円の面積の公式「S=πr2」、ここで使われている「r」はいうまでもなく「半径」のこと、英語の「radius(レイディアス=半径)」の頭文字です。円周上の半径の長さ分の弧に対応する角度を示す単位「radian(ラディアン=ラジアン)」は、この単語からの造語です。ラテン語「radius(ラディウス)」はもともと「光線」を意味しましたが、車輪の軸から放射状に伸びる棒、すなわち「輻(や)」のことも指しました。「半径」の意味はここから派生しています。エンジンから熱を放射する「radiator(レイディエーター=ラジエーター)」、キュリー夫人が発見した放射性物質「radium(レイディアム=ラジウム)」、繊維を放射状に入れてある「radial tire(レイディアル・タイヤ=ラジアル・タイヤ)」もこの語の子孫。物理分野で主に使われる用語「radiation(レイディエイション)」は「輻射(ふくしゃ)」とうまいこと訳されています。
もちろん「radio(レイディオ=ラジオ)」もこれらの仲間。文字通り訳せば「放射電信」となる「radiotelegraph(レイディオテレグラフ)」の略です。関連して「radio wave(レイディオ・ウェイブ)」と言えば「電波」のこと。電波はその周波数によって以下のように分類されています。
略語 | 英語 | 日本語 | 波長 | 周波数 |
ULF | Ultra Low Frequency | ― | 104km〜 | 〜30Hz |
ELF | Extremely Low Frequency | ― | 103km〜 | 〜300Hz |
VF | Voice Frequency | ― | 102km〜 | 〜3kHz |
VLF | Very Low Frequency | 超長波 | 10km〜 | 〜30kHz |
LF | Low Frequency | 長波 | 1km〜 | 〜300kHz |
MF | Medium Frequency | 中波 | 100m〜 | 〜3MHz |
HF | High Frequency | 短波 | 10m〜 | 〜30MHz |
VHF | Very High Frequency | 超短波 | 1m〜 | 〜300MHz |
UHF | Ultra High Frequency | 極超短波 | 10cm〜 | 〜3GHz |
SHF | Super High Frequency | センチ波 | 1cm〜 | 〜30GHz |
EHF | Extremely High Frequency | ミリ波 | 1mm〜 | 〜300GHz |
波動の公式「v=λf」から、波長×周波数は常に一定(光速)になるのが分かります。この「f」は「frequency(フリーカンシー=周波数、頻度)」の頭文字。ラジオの「FM」は「frequency modulation(=周波数変調)」の略で、「AM」すなわち「amplitude modulation(=振幅変調)」に相対する方式です。「FAQ(=よくある質問集)」は「frequently asked questions」の頭字語ですね。
上の表を見れば「短波ラジオ」やテレビ放送の方式である「UHF」「VHF」の意味するところがわかります。それにしても、英語で「とても」を表す語彙の豊富さ(「very」、「ultra」、「super」、「extremely」)は印象的です。でも「very」だけはちょっと陳腐な感が拭えないのは私だけ?「V.I.P.(=要人)」が「very important person」の略だと知ったときには、私の頭の中での「重要人物」の格がガクッと下がったものでした。
おまけ ― 電波以外の電磁波の種類としては、波長が長い順に赤外線、可視光線、紫外線、X線、ガンマ線があります。X線はドイツの物理学者「Röntgen(レントゲン)」が1895年に偶然発見した際に、「未知」の意味で「X」と名付けました。ガンマ線がどうして「γ」かというと、他に「α線」、「β線」という粒子の性質をもつ放射線があるからです。これらの「線」にあたる英単語「ray(レイ=光線)」も「radius」と同源です。
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