ハイト!一発!
日本語のハ行の発音は、江戸時代の前までは「ファフィフフェフォ」であった、と言われています。その根拠としてよく挙げられるのが、中世に成立したとされるなぞなぞ集「後奈良院御撰何曽」に出てくる「母にはふたたび会ひたれど、父には一度も会はず」という謎掛け。その答えが「唇」であることから、当時「母」が「ファファ」という両唇摩擦音であったことが推察されています。
その後、この「ファ」行が「ハ」行に変化していき、日本語の音韻体系から「ファ」行が空白になっていきます。特に明治の頃に輸入された外来語の中には、「f」の発音をハ行で表記するものが目立ちます。
表記 | 例 |
ファ→ハ | ウエハース ← wafers(ウェイファーズ) プレハブ ← prefab(プレファブ) |
フィ→ヒ | コーヒー ← koffie〔蘭〕(コフィー) ヒレ ← filet〔仏〕(フィレ) |
フェ→ヘ | ヘット ← vet〔蘭〕(フェット) |
フォ→ホ | イヤホン ← earphone(イヤフォン) プラットホーム ← platform(プラットフォーム) |
フュ→ヒュ | ヒューズ ← fuse(フューズ) |
ヒレ肉は日本語「鰭(ひれ)」の影響もあるのでしょう。オランダ語「vet」は英語の「fat」に対応する単語です。プラットフォームは単に「ホーム」とも言いますが、これに関しては次のような話を聞いたことがあります。
太郎さんのところに、アメリカから日本語の達者な友人ジョンさんが遊びにくることになりました。太郎さんはジョンさんに「ホームで待っているから」と言ったのですが、ジョンさんは「迎えにも来てくれないのか」と機嫌を損ねました。ジョンさんは太郎さんが「home(ホーム=家)」で待っていると思ったのです。
カッターナイフのブランド「olfa(オルファ)」は、この「f」と「h」の対応をうまく利用した商標です。板チョコにヒントを得て発明したという画期的なこの商品、名前の由来はもちろん「折る刃」。でも「olha」とすると「h」を発音しない言語があることから、現在の会社名でもある「olfa」を採用したとのことです(参考『OLFA Web』)。
おまけ ― つまらない流行に熱中する若者のことを指す「ミーハー族」に引き続き、昭和三十年代に登場した「ソーラー族」という言葉。ソラはミファ(ミハ)より音階が上なので、ミーハー族よりはランクが上だと思いこんでいる人たちを指しました。同じ頃に出現した「太陽族」とは偶然の一致!?
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