ソーダ軍曹

アメリカの学生にとって覚えにくい元素記号の代表といえば「Na」。なぜならば「Natrium(ナトリウム)」という呼び名はドイツ語であって、英語では通常「sodium(ソディウム=ソジウム)」だからです。

「Natrium」を遡るとギリシャ語の「nitron(ニトロン)」に辿り着きます。この単語は硝石(=硝酸カリウム、KNO3をはじめ、様々なアルカリ塩を指す単語で、この場合は炭酸ナトリウム(Na2CO3に由来します。「nitron」は他に、硝石に含まれる元素である「nitrogen(ナイトロジェン=窒素、元素記号N)」や、「-NO2」を含む化合物「nitroglycerin(ニトログリセリン、C3H5(NO3)3」「trinitrotoluene(トリニトロトルエン、C6H2(CH3)(NO2)3、略称TNT)」などの名称を生み出しています。因みに「硝子(ガラス)」という漢字表記は、硝石がその原料として使われることによります。

一方の「sodium」は、ナトリウム塩を意味する「soda(ソーダ)」に由来します。日本語では「曹達」という字を当てて炭酸ナトリウムのことを指しますね。ベーキングパウダーとして家庭でも利用される炭酸水素ナトリウム(NaHCO3は、この「炭酸曹達」よりも比重が重いため、「重炭酸曹達」略して「重曹」と呼ばれているわけです。子供のころから何だか「軍曹」みたいでエラソーな名前だと思っていたのですが、語源を知るとソーでもないですね。因みに炭酸飲料のことを「ソーダ」というのは、かつて炭酸水を作る際にはこの重曹をレモン水などの酸に溶かしていたためです。ソーダったんか〜と言ってもらえればこれ幸いです(どこかで聞いたことあるオチですが)。


おまけ ― 「窒素」という名称は生物を窒息させる元素という意味。この気体自体は無害なのですが、例えば液体窒素が漏れたりすると空気中の酸素濃度が低下して窒息事故につながります。