スイッチ・オン!
「super(スーパー=超)」よりもさらに強い意味で使われる接頭語「hyper(ハイパー)」。例えば「supernova(スーパーノヴァ=超新星)」よりも激しい爆発を起こした新星を「hypernova(ハイパーノヴァ=極超新星)」、「supermarket(スーパーマーケット)」よりも規模が大きなスーパーを「hypermarket(ハイパーマーケット)」と呼んだりします。この「hyper」、ギリシャ語起源の接頭語ですが実は「super」とは兄弟関係にあり、ギリシャ語が成立する際に「super」の「s」が「h」に変化したものなのです。この対応関係を知っておくと他にもなるほどと思えるギリシャ語由来の語に気が付きます。
同性愛者を指す「homo(ホモ)」という言葉があります。ご存知のように「homosexual(ホモセクシュアル)」の略です。また脂粒を砕いて均質化した牛乳を「ホモ牛乳」と呼びますがこちらは「homogenized milk(ホモジナイズド・ミルク)」を略したものです。これらの例から分かるように「homo」は「同じ」という意味で、英語の「same(セイム=同じ)」や「similar(シミラー=同じような)」と「同じ」語源の接頭語です。
地球の北半球・南半球の「半球」を英語で「hemisphere(ヘミスフィア)」と呼びます。「hemi(ヘミ=半)」+「sphere(スフィア=球)」という構成ですが、「hemi」は「semicolon(セミコロン)」や「seminude(セミヌード)」でお馴染みの、やはり「半分」を意味するラテン語「semi(セミ)」に対応するというわけです。
ギリシャ語由来の術語が多い化学用語を見てみましょう。炭化水素の一つ「hexane(ヘキサン、分子式C6H14)」や「DHA」の略称で知られる「docosahexaenoic acid(=ドコサヘキサエン酸)」の名に含まれる「6」を表すギリシャ語「hex(ヘクス)」、16進数を多用するコンピュータの世界でも「hexadecimal(ヘキサデシマル=16進数の)」の意味でよく使いますが、ご想像通り英語の「six(シックス=6)」と関係があります。
原子番号2番の「helium(ヘリウム、元素記号He)」は、1868年の皆既日食の際にコロナのスペクトル分析の結果発見されたため、ギリシャ語の「helios(ヘリオス=太陽)」に因んで名付けられました。「helios」の直接の子孫には「helianthus(ヒリアンサス=ひまわり)」等あまり見慣れない語が多いのですが、ラテン語の「sol(ソル=太陽)」ひいてはその派生語「solar(ソーラー=太陽の)」、「soleil〔仏〕(ソレイユ=太陽)」、「parasol(パラソル)」はその親戚です。
周期表の17族元素の総称「halogen(ハロゲン)」の語源は「hals(ハルス=塩)」+「-gen(=を生じさせるもの)」ですが、「hals」はラテン語の「sal(サル=塩)」や英語の「salt(ソルト=塩)」に対応する語です。「sal」は「salary(サラリー←塩を買うための給金)」、「salad(サラド=サラダ←塩漬けにした)」、「salami(サラミ←塩漬けにした)」、「sauce(ソース←塩味をつけた)」と派生語の多い単語です。
以上、「s(エス)」が「h(エイチ)」に「スイッチ」したギリシャ語たちのお話でした(くっ、苦しいオチだ…^_^;)。
おまけ ― 「s」と「h」ではあまりに発音が違うじゃないか、と思われるかもしれませんが、日本語でも「しち(七)」が「ひち」と発音されることがありますね。関西弁では他にも「おばさん」→「おばはん」、「してなさる」→「してなはる」→「してはる」、「してません」→「してまへん」などの例があります。
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