日英駄洒落合戦

欧米人は冗談好き、とよく言われますが、言葉を使った駄洒落に関しては日本の方が盛んな気がします。今回はそんな言葉遊びから生まれた言葉をご紹介しましょう。

トップバッターは「へちま」、漢字で「糸瓜」と書くように、かつての名前は「いとうり」でした。この先頭の「い」がいつしか省略され「うり」と呼ばれるようになります(もしくは「唐瓜」から「とうり」)。さてここで「いろは歌」を思い出してみてください。「いろはにほへちりぬるを」と、「と」は「へ」と「ち」の間にありますね。ここから出来た「へち間」の呼称が一般的になり、現在の「へちま」に至るわけです。

お次は「濡れ衣」。「無実」→「実の無い」を「蓑無い」にかけ、蓑が無いと雨で衣が濡れることから「濡れ衣を着せる」が「無実の罪を着せる」の意味になりました。金ばかり使って遊び呆けている息子を指す「銅鑼息子(どらむすこ)」も「金を尽く」を「鐘を撞く」にかけた言葉遊びによるものです。

物が使い物にならなくなることを「おしゃかになる」と言いますが、これも駄洒落から生まれた言葉。鋳物職人が火力が強すぎたために不良品ができると「火が強かった」と言っていたのが、江戸弁の発音のため「がつよかった」になり、これがさらに「四月八日」に変化。この日がたまたまお釈迦様の誕生日だったというわけ。「お陀仏になる」の表現もありますね。

こんな単語たちを後世に遺しているとは、日本のおやじギャグパワーも捨てたものではありません(考えたのがおやじかどうかは知りませんが )。コギャル語の「ホワイト・キック(=しらける)」なんかよりよっぽど気が利いていますね。

一方英語にはこの様な駄洒落語源を持つ単語は私は知る限りではありません(ご存知の方はこっそり教えてください ( ^.^)y)。その代わりといっては何ですが、日常(特にEメールで)よく使われるのが「CU(=see you)」、「2U(=to you)」、「4U(=for you)」、「IOU(=I owe you)」など、単語の一部あるいは全体を同じ発音のアルファベットや数字で置き換える言葉遊び。チャットソフトウェアの名称「ICQ(=I seek you)」などの傑作もあります。「オズの魔法使い」の「Oz」は「Aussie(オージー=オーストラリア)」にアルファベットを当てて作った造語という話。主人公のドロシーは竜巻によって、故郷カンザスからはるばるオーストラリアまで飛ばされていたというわけです。

では最後に、この英語の言葉遊びを逆に利用した笑い話をご紹介いたしましょう。

アメリカを旅行中の、英語のあまり得意でない鈴木さんが、シカゴ行きの切符を買うために駅の窓口に行きました。鈴木さんが「To Chicago, please.」と言うと駅員は切符を2枚差し出しました。焦った鈴木さんが「No, no, for Chicago, please.」と言うと今度は切符が4枚出てきます。困った鈴木さん、日本語で「え〜と〜」。さらに切符が8枚。遂にあきらめた鈴木さん、その場を去ろうと「さ〜て」。立ち去る鈴木さんの手には44枚の切符が握られていました。


言葉の世界』の佐藤和美さんからこんな情報を頂きました。

以前、私の伝言板に、「酒飲みのことを「左党」というのはなぜ?」という質問がきたことがありました。答えは「石工などが鑿(のみ)を持つ方の左手を「鑿手」(=飲み手)と言ったところから」です。