ジャックはあなたのそばに

日本の「太郎」にあたる英語の名前の一つとして「Jack(ジャック)」が挙げられます。元々は「Jacob(ヤコブ)」から派生したフランスの名前「Jacques」に由来しますが、この「Jack」さんから派生した言葉、身近に驚くほど沢山あります。

まずそのままの人名に由来する単語。「jackknife(ジャックナイフ)」は刃物師の名前から。「jacket(ジャケット)」も人名「jack」に指小語尾「et」(「ロバっち、糸っち、タオルっち」参照)が付いたものと言われています。これに対応するドイツ語の「Jacke(ヤッケ)」も登山用語として日本に入ってきていますね。「チョッキ」もオランダ語の「jak」がなまったものです。

「Jack」は非常にありふれた名前だったため、「Jack of all trades, and master of none.(=多芸は無芸)」の諺に代表されるように、一般的に人を表すのに用いられます。「hijack(ハイジャック)」は一説によるとギャングが車を奪う際の脅し文句「Hi, Jack, leave your car!(≒ようよう、太郎、車置いてきな!)」に由来するのだとか。「帰ってきたウルトラマン」のことを最近は「ウルトラマン・ジャック」と呼ぶのだそうですが、これなど「ウルトラマン・タロウ」のノリですね。

さらにこの「Jack」、辞書を調べてみると「刑事」「水夫」「木材切出人」「召使い」と様々な職業をも意味します。トランプのカード「Jack」は「召使い」の意味(私はてっきり王子だと思い込んでいたんだけど…)、対応するスコットランド語「Jock」の愛称「jockey」は、現在では競馬の騎手やDJのことですね。

人間だけでは飽き足らず、「jack」は機械やその一部にも使われます。電話線を差し込む穴は「telephone jack(テレフォン・ジャック)」、車を持ち上げる「ジャッキ」も「jack」の発音が訛ったものです。スロットマシンなどでたまった掛け金のことを「jackpot(ジャックポット)」というのは、このジャッキが「持ち上げる」ことからの発想。さらに「旗」の意味で使われる「jack」として、イギリスの国旗「Union Jack(ユニオン・ジャック)」、骸骨印の「blackjack(ブラックジャック=海賊船の黒旗)」の例があります。

最後にもう一つ、日本では「豆から作ったスナック菓子」のことも意味しますね。渡辺正行の「マメマメマ〜メ」の宣伝は一世を風靡したものです。