原子から宇宙まで

 単位の頭に付く「ミリ」や「キロ」などのお話。最近はパソコンの普及で「メガ」や「ギガ」なども一般的になってきましたが、これらの接頭辞は国際単位法(SI)なるもので決められています。調べてみました。

記号 読み方 語源 同語源の言葉
yotta(ヨッタ) 1024 otto〔伊〕(=8) こちらを参照
zetta(ゼッタ) 1021 sette〔伊〕(=7) September(=9月)
exa(エクサ) 1018 hex〔希〕(=6)  
peta(ペタ) 1015 pente〔希〕(=5) こちらを参照
tera(テラ) 1012 teras〔希〕(=怪物)  
giga(ギガ) 109 gigas〔希〕(=巨人) giant(=巨人)
mega(メガ) 106 megas〔希〕(=大きい) megaphone(=メガホン)
kilo(キロ) 103 chilioi〔希〕(=1000)  
hecto(ヘクト) 102 hekaton〔希〕(=100)  
da deka(デカ) 10 deka〔希〕(=10) Decameron(=十日物語)
deci(デシ) 10-1 decem〔羅〕(=10) December(=12月)
decade(=10年)
centi(センチ) 10-2 centum〔羅〕(=100) cent(=¢)
percent(=%)
century(=世紀)
centigrade(=℃)
(ローマ数字の)
milli(ミリ) 10-3 mille〔羅〕(=1000) mile(マイル)
permill(=‰)
million(=百万←千×千)
millennium(=千年紀)
(ローマ数字の)
millefeuille〔仏〕(ミルフィーユ)
μ micro(マイクロ) 10-6 mikros〔希〕(=小さい) microphone(=マイク)
nano(ナノ) 10-9 nanos〔希〕(=小人)  
pico(ピコ) 10-12 pico〔西〕(=少し) piccolo〔伊〕(ピッコロ)
femto(フェムト) 10-15 femten〔丁・諾〕(=15)  
atto(アット) 10-18 atten〔丁・諾〕(=18)  
zepto(ゼプト) 10-21 sept〔希〕(=7) September(=9月)
yocto(ヨクト) 10-24 okto〔希〕(=8) こちらを参照

「September」や「December」の語源が実際の月とずれているわけは「蛸とガソリンと10月の関係」を御参照下さい。「mile(マイル)」がなぜ千に関係あるかというと、千歩分の長さだから。しかし1mile≒1.6kmだから一歩が1.6mにもなってしまうのは、今で言う二歩を一歩と数えたからです。パイ生地で作るお菓子「millefeuille(ミルフィーユ)」の原義は「千枚の葉」です。

この中でも面白いのが「peta」と「exa」の言葉遊びによる生い立ち。牛乳を入れる「Tetra Pak(テトラパック)」、堤防を作る「tetrapod(テトラポッド)」などに使われているギリシャ語由来の「tetra(テトラ=4)」という接頭語がありますが、「tera」の綴りがたまたまこの「tetra」の「t」が欠けた形になっているため、「5」「6」を示す接頭語「penta」「hexa」からやはり一字ずつ抜いて作られたのが「peta」と「exa」です。

「yotta」「zetta」「zepto」「yocto」は1990年に加えられた新しい接頭辞。「sette」、「sept」の頭文字「s」を「second(=秒)」と混同しないように「z」に置き換えたのが「zetta」と「zepto」、「otto」、「okto」の「o」を「0」と間違えないように頭に「y」が付け加えられたのがそれぞれ「yotta」、「yocto」です。(以上参考:『Usenet Physics FAQ』)

これらの補助辞を使えば、知られている最大の銀河の直径は約53Zm(ゼッタメーター)、陽子一個の質量は約1.67yg(ヨクトグラム)などと10n抜きでシンプルに表せるようになります(でもやっぱり実感が湧かないことに変わりは無いですね)。将来は「CPU500EHz(エクサヘルツ)、メモリ32ZB(ゼタバイト)、ハードディスク10YB(ヨタバイト)」なんてパソコンが店頭に並ぶんでしょうか?

これらの知識を、数年前に採用された痛みの単位「ハナゲ」、恥ずかしさの単位「イナリ」と組み合わせて用いれば、彼女との会話にも知的エッセンスが加わることマチガイ無しですね。


おまけ ― (この項にあった情報は加筆して「大きな家来」に移動しました)